書籍編集者の裏ブログ -5ページ目

作家の想像力

某ホテルの二階にあるティーラウンジで作家との打ち合わせが終わって、その作家と並んでエスカレーターで一階に下りていったときのこと。


小学校五年生くらいだろうか、女の子が泣き顔を隠そうともせず、中空をにらみつけていた。私はその作家に、

「10年もしたら、凄い美人になりそうですね、あのコ」

というようなゲスなおっさんセリフをその作家だけに聞こえるような声でいいました。その作家は、

「でも、もの凄く、性格は悪いよ、あのコ。父親がいい加減なヤツ、おそらくヤクザですね。母親はホステスで、頑張ってあのコを育ててるんだけど、この母親が性悪。この母親の性格が彼女に遺伝してしまっている。父親は、性格は悪くないのだけれど、社会正義のような意識が薄くて、人を騙して小商いしている。母親は、舌先三寸、7人ほど転がして、生活費をかせいでるね。女の子は、勉強はそこそこできるから、上智の外国語学部あたりに入学して、学費のこともあって、夜は銀座でアルバイトホステスだね。小娘に40代のいい歳のオヤジたちがころころ騙されて貢ぐんだよ。あーやだやだ」

私は、その逞しい想像力の回転にたじたじでした。


改めてその作家に、聞いたことがあります。

「電車の中やデパートですれ違う人たちについても、そうした背景やその人の抱えている問題や将来が次々浮かんでくるんですか」

「だから、人混みはイヤなんです。気が狂いそうになります。野球場なんか大変」

うーん、やっぱり天から与えられた才能ですね。

後天的に身につけるのは大変かもしれません。


ちなみにその作家は、天才的にキャラクター作りのうまい作家です。